ホモ・サピエンスよ、腹を括るべし

最近、サピエンス全史という書籍を紹介され、なかなか面白いことが書いてある本だなと興味をそそられた。その中に、チンパンジーから猿人へ、更にそこから大きな脳を持つホモ属へと進化したヒトの、およそ600万年前から30万年前までの過程が描かれており、何を食べ、咀嚼をし、やがてそこから火を使うことでエネルギー消費が変わり、火や道具を使うことでの複雑な社会構造というものが明らかにされていた。故・大森秀櫻先生が日本で三十年以上も前に、ヒトの進化について、「我々の祖先にあたる猿人だけが禾本科の実を食べてくれたお陰だ」と講演されていたことを思い起こさせた。

故・大森秀櫻先生の凄いところは、さまざまな病人を自宅に住まわせ、あるいは病人のもとへ訪問し、先に述べた「ヒトを誕生させた食物」というアイデアと「陰陽」というものさしを用い、食養指導を行い治療したことである。

一銭も貰わずに。その指導の数は1万人を超える。

きっかけは師匠の桜沢如一先生が「大森くん、二千人の病人を指導してみなさい」と指示されたことからだとか。

その病人たるや、癌、白血病、糖尿病、脳溢血、緑内障、自閉症、胆石、難聴、メラニン色素欠乏症、アレルギー、アトピー、、、などさまざまで、その中には医者に匙を投げられた病院患者や、大物政治家、芸能人まで多岐に渡っている。

私は大森先生の時代に少し遅れてこの世に生まれたので、大森先生のお弟子さんたちが作成した大森先生の講義録の数々、書籍やビデオ(DVDのなかった時代)を貪り、ショックを受けたことを覚えている。その治療の記録そのものが衝撃的だったが、それよりも大森先生の食養指導に対する姿勢そのものに、自分がこれまでの人生で勉強したと思っていたことの全てが薄っぺらく無責任なものでしかなかったと気づかされたことのショック。本当の学びとは目の覚めるような喜びと共に、腹の底からの正直さ、まずは自分自身に対して嘘偽りのないことだと気づいた。その後、縁あって奥様の一慧先生の料理教室に参加することができ、そこでまた実体験の重要さを知った。

大森先生の病人指導は、この宇宙の根源であり、全てを包括する陰陽論を用いているとはいえ、それは神がかりで、当時、「あなたの癌を二週間で治す」と言って指導にあたり、本当に二週間で治したり、人や社会の未来を予測したり、大森先生の講座に参加していた人の会ったこともない家族のこれから起こるであろう病気を予言したり、そしてそれが全て当たるのだから、それを体験した人たちは驚いたことだろう。本人は陰陽論を用いただけと言っても、そんな風に全てを悟れる人はなかなかいない。わたしたちの多くが陰と陽という偉大なる叡智を持て余しているだけだ。

事実、病人指導は「宇宙の法則、陰陽を使ったアソビ」と言われており、アソビ故にそこに人生の全てをかけて没頭されたのだと思う。何かわからないことがあると何日も徹夜して飲まず食わずでわかるまで調べ物をしていた、とは奥様談。

それでも病人の中には病気が治らなかった人もいただろうし、その病人の家族にはこういった自然治療に理解なく反感を持っていた人もいただろうと思う。

現在、もし医師免許のない治療家が大森先生のような治療を行ったとしたら訴えられても不思議ではないし、そうでなくても世の中は資格や肩書き(欧米では肩書きより経歴)、それにデータだ、エビデンスだとうるさい。

最近見たニュースでは、日本も諸外国に遅ればせながら、上智大学がデータサイエンスを必修化し、今後高校もそうなっていくという。データというもので物事を認識し、認識したという思い込みで進んでいく社会。全てがデータで支配される社会になっていくのだろう。データでは測れない機微こそが世の中を動かしているエネルギーかもしれないのに。

大森先生にしてみれば、たくさんの病人を無償で指導した自己の経験こそが確かな証拠で、何かを操って得た数値など机上の理論でしかなかっただろうし、師の桜沢如一先生も、科学は陰陽という眼鏡を通して見てこそ真実があると言われていた。

今、このような経験と思想を持った治療家がいるだろうか。

人生を賭けた本気のアソビ(それを本来プロと呼ぶのだと思うのだけど)、そういったことが許されないような社会の風潮と、現代の治療家たちが行なうことが治療ではなく商いにならざるを得ない構造が本物の治療家に出会えない理由かもしれない。(これは治療家に限らず全ての業種に言える。)

また、病人の側はというと、自分の健康をいかに他人任せ、医者任せにしている人が多いのか、それがこのパンデミックの二年間で一層はっきりとした。

自分の健康を他人任せにする人が商いをする人のところに行ったらどうなるだろうか、そしてそれをデータで支配したらどうなるかと考えると、分かりやす過ぎて笑いが出る。

本当に治りたかったら、どんな病気も自分に与えられたサインなのだから、「自分の病気は自分で治す」と腹を括らなくてはならない。治療する側は治してやるのではく、治ることをサポートする側で、これもひとりの病人を前にして腹を括らなければできないと思う。

今、やっぱり、覚悟がない人が多いんだよね。

ゴミの山ほどの情報に溢れつつも、何も見えなく、聞こえなく、言えなくさせられ、わけのわからない不安を与えられている社会なのだから、覚悟ができなくて当然なのかもしれないけれど。

激変する時代を迎えるには腹を括るべし。ハラに力がいる。

ホモ=人・サピエンス=賢い、故に他の種を抑え何万年も生き延びて来たはずなのだから。馬鹿な人にさせられてはいけない。



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